笠間日動美術館:学芸員便り

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■「幻の大津絵と東海道五拾参次」の作品紹介 その5

2022年02月04日

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東海道五拾参次「三嶋宿」(丸清版)笠間日動美術館蔵
「幻の大津絵と東海道五拾参次」で展示している作品の中から、歌川広重「東海道五拾参次」より丸清版の11番目「三嶋宿」と19番目「府中宿」をご紹介いたします。

竹内 眉山(たけのうち びざん)が営む、地本錦絵問屋(浮世絵版画などを企画出版して販売する店)の保永堂から出版された「東海道五拾参次」(1834年)は、江戸での旅ブームなどから大ヒットとなりました。
商業的な成功から、他の版元からも東海道五十三次を注文されるようになります。
丸清版は、保永堂版から20年ほどたった1848-54年に丸屋清次郎から出版されました。題字が隷書体であることから隷書版とも呼ばれます。

広重は、丸清版の中に”ある”サービスを施しました。

■東海道五拾参次「三嶋宿」(丸清版)笠間日動美術館蔵

東海道11番目の宿場「三嶋」は、三島大社の門前町として発展し、箱根峠の足元として多くの人々が立ち寄りました。
本作では、薄暗くなる中、旅人が三嶋宿に到着した様子が描かれています。

(ちなみに十返舎一九「東海道中膝栗毛」では、弥二さんと喜多さんが宿に一緒に泊まった十吉という男は、実は護摩の灰(旅人の姿をして、道中で、旅客の持ち物を盗み取ったどろぼう。)で、夜に起きた騒動に乗じて弥二さんの財布を盗んで行方をくらましてしまいました。)

広重は、画面左の明るく旅人を迎える店の壁に出版元の「丸清」の文字を書いています。
複数の版元から東海道五拾参次が出版されていた当時、画面に名前を入れることで版元の宣伝効果があったかもしれません。また、広重の遊び心がみられます。

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東海道五拾参次「府中宿」(丸清版)笠間日動美術館蔵

■東海道五拾参次「府中宿」(丸清版)笠間日動美術館蔵

同じく丸清版から19番目の宿「府中」を紹介いたします。

徳川家康が晩年に駿府へ隠居したことで、城下町が繁盛しました。府中でも薄暗い中、街についた旅人が呼び込みをする女性たちに応じている様子が描かれています。

また、ここでも広重による「丸清」の文字が描かれています。

(*正解は、会場でご確認ください。)

*1月2日(土)から3月6日(日)まで開催中の「幻の大津絵と東海道五拾参次」は会期中、前期後期で展示替えがございます。歌川広重「東海道五拾参次」のうち、今回紹介した宿場を含む、日本橋-掛川までを展示する前期は、2月6日(日)までとなっております。後期は、2月8日(火)から3月6日(日)までを予定しております。(袋井-京都 三条大橋まで)

展覧会の詳細については
PCから→ http://www.nichido-museum.or.jp/exhibition.html

スマートフォンから→ https://onl.la/f9LndqW
(T.T)