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笠間日動美術館 企画展履歴

「アンティークドールの夢」 そして絵画の中の人形たち
Dream of Antique doll And doll in the painting

アンティークドールの夢

本展で紹介する約100点のアンティークドールは、19世紀後半から20世紀初頭にかけ、フランスやドイツで制作されたビスクドールと呼ばれる人形です。

やわらかな透明感のあるビスク(二度焼きした磁器)でつくられた顔、手彩色ガラスの神秘的な瞳、人間のように関節が動くボディ、そして豪華なレースやシルクをつかった手縫いの衣装…。

アンティークドールの黄金時代を築いたエミール・ジュモーやブリューをはじめとする名高い人形工房の、精緻な技術や一途な仕事振りがうかがえます。それ故制作には多くの手間を要し、20世紀に入り廉価な人形が量産されはじめるとしだいに姿を消していきました。
しかし現代においては、アンティークドールの希少性と完成度の高さは美術品として評価され、往時と変わらず人々を惹きつけています。

昭和洋画史に名を残す巨匠たちも、これらの人形に魅了され、多くの作品を描きました。
本展では、小出楢重、児玉幸雄、田村孝之介らの描く人形をテーマとした作品約20点を併せて展示いたします。

また本年初夏、パリで個展を開催し好評を博した野本将文の写真作品約50点を紹介、彼のレンズが捉えた作品からは、人形たちのもうひとつの姿が浮かびあがってきます。

深く美しい眼差しで、私たちに夢の数々を語りかけるアンティークドール、そして絵筆やレンズで再現された人形たちとの饗宴を、ご鑑賞頂きたいと存じます。

主 催財団法人 日動美術財団
後 援茨城県/茨城県教育委員会/笠間市/笠間市教育委員会
協 力インターナショナルアンティックハウス
会 期平成18年9月9日(土)〜平成18年11月26日(日)
会 場笠間日動美術館 企画展示館
開館時間午前9時30分より午後5時(入館受付は4時30分まで)
休館日毎週月曜日(但し、9月18日、10月9日は開館、翌日休館)
入館料大人1,000円、大学・高校生700円、中学・小学生500円、65歳以上800円(20名以上の団体は各200円割引)

関連イベント

「アンティークドールを描いてみよう!!」

    
開催日毎週土曜、日曜
場 所企画展示館1F
内 容館内に制作の場を設け、展示されているアンティークドールをモチーフに、鉛筆、クレヨンなどで自由に描いていただきます。
希望される方には館内で作品を公開、なお、優秀な作品には賞を授与いたします。
持ち物鉛筆やクレヨン、パステルなどの画材の持ち込みが可能です。水彩、油彩はご遠慮下さい。
定 員午前、午後 各16名、予約も承ります。
参加費用無料
その他講師・指導者は付きません。その旨ご了承下さい。

Masafumi NOMOTO 本展に展示中の作品は、パリの蚤の市の店頭に並ぶ人形に取材したものです。
野本は、バラバラの部品と成り果て売買されている人形の姿に心惹かれ、度々蚤の市に足を運んでシャッターを切りました。

これらの写真は2006年6月、パリ市主催のA3-art(サン・シュルピス広場)で公開され、好評を博しました。
以下に紹介する“Les Poupins”は、A3-artの展観に際し、フランス人の友人が野本の思いを代弁して綴ったものです。

“Poupin”とは「人形のような顔つき」という意味のフランス語であり、一般には美しく愛らしい人間の形容に用いられます。
しかし野本は、この言葉とはうらはらに、蚤の市に並ぶ人形の顔に怒りや哀しみ、愛憎など、極めて人間的な情感を見出しました。華やかな衣装を脱ぎ去り「人間のような顔つき」をして、今や写真の中に登場する人形たちは、鏡の中に反転して映し出された我々人間の姿でもあるのでしょう。

今秋はグランパレの出展要請を受けコンパレゾン2006に参加、今後の活動が大いに注目されます。

Les Poupins
Des passants chinent d’anciennes poupees. Sur des etageres bien ordonnees ou dans des cartons 《 pele-melees 》. Un oeil,celui du photographe qui regarde ces gens regarder. Il mise alors sur ces etranges《 Poupins 》, comme un point de convergence aux ombres, a la lumiere, a l’abandon, au bruit et au silence...a ce qui faconne une existence.
Dernier focus sur un travail en noir et blanc, emprunt du reflet(Les reflets 1999) et de la trace visible et intangible(Les ombres 2002), ces Poupins eveillent en nous de troubles emotions. Comme si ces 《 etres 》 desincarnes portaient en eux l’incarnation de notre propre humanite. Et du regard que l’on pose sur elle.
(A Saint-Sulpice, Paris 2006)

整頓された棚 くずれた段ボール箱
それを覗く 通りすがりの人間が 人形をからかう
そんな人間を見る眼球 ある写真家の目
光と影、孤独、雑音と沈黙、そして収束として...
写真家の目は そんな、在るものを
不思議な”人形の様な顔つき”をしている”Poupin”たちに 魅了されながら
白黒の最後のフォーカス。
反影の足跡(1999年)、そして触れる事の出来ない見える影(2002年)に続き、Poupin(2004年)は感情を沸き立たせてくれる。
…人形の様な顔つきが感情を沸き立たせ
我が人間性は受肉し、我が見る眼球は変容する。
(サン・シュルピスに寄せて 2006)

■野本将文 プロフィール

1958年
高知県に生まれる。
1980年
初めてパリを訪れる。
1992年
パリ 国虎屋(うどん屋)オープン。その傍らカメラを携えて、パリの風景を撮り続ける。
1999年
パリ建築専門学校にて個展開催。「水たまり」
2002年4月
東京・日仏文化会館(恵比寿)にて個展開催。「影」
2002年8月
高知県立美術館「NO BORDER」展に参加。
2004年6月
ラバ芸術祭参加。(在モロッコ日本大使館後援)
2004年8月
写真集『GLOBE』発売。(Track Associate出版)
2006年6月
A3-art(パリ市主催)に参加。(サン・シュルピス広場)
2006年9月〜11月
「アンティークドールの夢」展に出品。(笠間日動美術館)
2006年11月
コンパレゾン2006に参加。(パリ・グランパレ)

Marque profondement par les rues de Paris, de la vie des gens ordinaires, de l’ombre et les lumieres, d’ephemeres nappes d’eau apres la pluie, le reflet, la reflexion.....Ou bien, des figures abandonnees, fragmentees, oubliees, le silence. l’Existence, Homme comme sculpte.
Ainsi, vingt ans debr photographie dans le paysage parisien.

パリの道に心打たれた。
ごく普通な日常生活 陰影や光 雨の後のはかない水たまり
反映 反射 反響…
あるいは、うち捨てられ 小刻みにされ 忘れ去られた姿
沈黙 存在 彫られた”もの”としての”人間”。
そんなパリの風景を撮り続けて20年。